台風Dianmuによる大雨と洪水

October 4, 2021
Masaki Sato

台風Dianmuによる大雨と洪水

概要

  • 先週末、台風Dianmuの影響で、タイの北部、北東部、中部を中心に大雨が降りました。
  • タイ災害防止軽減局(DDPM:Department of Disaster Prevention and Mitigation)によると、9月中旬のモンスーンによる大雨と台風Dianmuの影響により、27の県で58,977世帯が洪水の被害を受けています。
  • DDPMによると、北部のSukhothai県と中部のLopburi県で深刻な被害が発生しています。
  • チャオプラヤ川上流域における一部主要ダムの水量は、9月の1か月間で急激に増加しました。
  • チャオプラヤ川の水位は、いくつかの観測地点で”Critical(警告)”レベルに達しています。今後、ダムからの放水量が増加した場合、河川の水位はさらに上昇する可能性があります。

台風Dianmuによる大雨

※台風Dianmuは9月25日に低気圧になったため、正確には全ての降雨が「台風」の影響によるものではありませんが、本ニュースでは台風Dianmuの影響と表現します。

台風Dianmuの影響により、9月23日から26日頃にかけて、タイ北部、北東部、中部を中心に大雨が発生しました。9月24日、25日、26日の日降水量マップを下図に示します。9月24日、25日には、タイ北部、北東部、中部、東部で、日降水量100mm~200mmの雨が観測されています。

洪水による被害

災害防止軽減局(DDPM)によると、タイ北部のSukhothai県で7,392世帯、中部のLopburi県、Chaiyaphum県でそれぞれ37,451世帯、453世帯が洪水による被害を受けています。

下図は、GISTDA(Geo-Informatics and Space Technology Development Agency)が公表している過去7日間(9月21日~9月27日)の浸水エリアマップ(内水氾濫、鉄砲水を含む)です。同図によると上記3県の他、Phitsanulok県、Phichit県、Phetchabun県、Nakhon Sawan県、Nakhon Ratchasima県、Prachinburi県、Ayutthaya県等でも洪水が発生しています。Nakhon Ratchasima県では、一部の貯水池で水量がキャパシティを超えたため、県政府から警告が発せられています。

今後の天気

タイ気象局によれば、今週の天気は以下のように予測されています。

「9月28日~30日は、アンダマン海、タイ湾の弱い南西モンスーンの影響により、タイ中部から南部にかけてモンスーントラフ(周囲から風が集まる低圧部で雲が発達しやすいエリア)が発生します。全国的な雨量は少ないですが、タイ東部、南部の一部では大雨となる可能性があります。

10月1日~3日は、弱いモンスーントラフが上昇し、タイ北部、北東部、中部、東部に移動します。また、アンダマン海、タイ湾では南西モンスーンが強まり、再び雨が多くなる見込みです。特に東部、南部では局所的に大雨となる可能性があります。」

ダム貯水量(Sirikitダム、Bhumibolダム)

貯水量:Sirikitダム(貯水率 43% 2021926日時点)

貯水量:Bhumibolダム(貯水率 45% 2021926日時点)

9月上旬から中旬にかけての大雨と台風Dianmuの影響により、9月1日以降、SirikitダムとBhumibolダムの貯水量はそれぞれ5%、11%増加しました。今後も大雨により両ダムの貯水量が増加する可能性があり、注視する必要があります。一方、現時点の貯水量は、大規模洪水が発生した2011年の半分程度です。

ダム貯水量(Pasakダム、Kwaenoi ダム)

貯水量:Pasakダム(貯水率 73% 2021926日時点)

貯水量:Kwaenoiダム(貯水率 83% 2021926日時点)

9月上旬から中旬にかけての大雨と台風Dianmuの影響により、9月1日以降、PasakダムとKwaenoiダムの貯水量はそれぞれ67%、55%増加しました。Pasakダムの貯水量は、例年9月に急増する傾向がありますが、今年は台風Dianmuの影響で、貯水量が運用レベルの上限にほぼ達しています。Kwaenoiダムの水位もほぼ運用レベルの上限に達しており、2011年における同時期の水位の約85%となっています。

チャオプラヤ水系の河川水位(チャオプラヤダム上流:2021年9月27日時点)

9月1日以降、チャオプラヤ川上流域の水位が急激に上昇しています。SukhothaiとPhichitの間では河川の氾濫が発生しており、Wang川、Nan川、および主要4河川の合流点付近の水位は”Critical(警告)”レベルに達しています。

Water Situation in the Chao Phraya River
27th September 2021

【備考】
①河川の中に示されている黒文字の数値:河川流量(m3/sec)
②上記①の近くに示されている括弧付きの数値:当該地点の限界流量(①の流量が②の流量以上となった場合、洪水が発生)
③上記②に付随する「アルファベット+数値(例:N.67)」: 観測所の名称
④緑文字・-(マイナス)付きの数値:堤防天端から河川水位までの距離(0になった場合、洪水が発生)

チャオプラヤ水系の河川水位(チャオプラヤダム下流:2021年9月27日時点)

チャオプラヤ川下流域の水位も急激に上昇しています。Utai Thaniでは河川の氾濫が発生し、いくつかの観測地点では水位が”Critical(警告)”レベルに達しています。しかしながら、河川流量は未だほとんどの地域で人為的にコントロールされています。

Water Situation in the Chao Phraya River
27th September 2021

【備考】
①河川の中に示されている黒文字の数値:河川流量(m3/sec)
②上記①の近くに示されている括弧付きの数値:当該地点の限界流量(①の流量が②の流量以上となった場合、洪水が発生)
③上記②に付随する「アルファベット+数値(例:N.67)」: 観測所の名称
④緑文字・-(マイナス)付きの数値:堤防天端から河川水位までの距離(0になった場合、洪水が発生)

 

参照

https://mgronline.com/local/detail/9640000095509

http://flood.gistda.or.th/

https://www.tmd.go.th/en/7-day_forecast.php

http://www.arcims.tmd.go.th/dailydata/DailyRain.php

http://www.arcims.tmd.go.th/dailydata/yearRain.php

http://www.thaiwater.net/water/dam/large

http://water.rid.go.th/flood/plan_new/chaophaya/Chao_up.php?cal2=27092021

http://water.rid.go.th/flood/plan_new/chaophaya/Chao_low.php?cal2=27092021

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Masaki Sato